イタリアのすすめ

イタリアについてのあれこれを書き綴ったブログです。時々本業のクラシック音楽についても語ります。どうぞよろしくお願いいたします。

音楽家のエッセイ【おすすめ3冊】一流のプロの日々の練習法はビジネスその他にも応用できる?!

 

これまで読んだ中で、特に興味深かった音楽家演奏家)のエッセイを【3冊】ご紹介いたします。

 

  • 「音楽家の日常ってどんな感じ?」
  • 「練習はどんなふうにしているの?」
  • 「演奏中はどんなことを考えているの?」

 

など…

一流の演奏家たちが「日々考えていること」や、「練習法」「演奏」についてなど、舞台上の姿からだけではうかがい知ることのできない、違った側面にも触れることができて興味深いです。

 

 

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「点と魂と スイートスポットを探して」小山 実稚恵著

  

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出版社:KADOKAWA

発売日:2017年5月2日

単行本、ソフトカバー:176ページ

 

内容紹介

 

アスリートその他、様々な分野の一流のプロ12人との対談から著者が見つけた、「最高の結果を引き出すためにすべきこと」のヒントが綴られた本。

 

どんな仕事や創作にも、強みや才能、経験、やる気などを最大化し、最高の結果を引き出せる ”点” がある。

つまりは「スイートスポット」があるということ。

それは、仕事のコツであったり、心やからだの整え方であったり…。

超一流のプロフェッショナルの方々は、そんな「仕事の極意」を独自の方法で会得していらっしゃる。

(中略)

女優・大竹しのぶさん、狂言師野村萬斎さん、棋士羽生善治さん、バレエダンサー・熊川哲也さん、宇宙飛行士・山崎直子さん…。

いずれも各界を代表する方々と語り合うなかで、たくさんの学びや貴重な発見がありました。

これまでの対談の内容をわたしなりに振り返り、印象に残ったこと、共感したことなどを本書に綴りました。

(中略)

最高の結果を出すために必要なことを、肉体面や精神面も含め、多様な角度から語ったものになりました。

ピアニストに興味のある方はもちろん、どなたが読んでも、なにかしら活かせるヒントがみつかるのでは、と思っています。

(「まえがき」P.10~11より引用)

 

読んでみた感想、おすすめポイント

 

  • 体が勝手に動くようになるまで訓練を重ねることの大切さ
  • ポジティブ思考で、変化を怖れず、良いと思うものはまず試してみる
  • 始めたばかりの頃のワクワクを思い出すために、時には原点回帰してみる

 

など…

確かに!と思えることや、常に忘れてはいけないなぁ、と思える事柄が沢山書かれていて、時折読み返してみると良いなと思いました。

 

 

個人的に印象的だったエピソードは、

オリンピック出場の時、現地の気候や路面の状態を考慮して特注のシューズを50足も用意していたことなど、音楽家にとっての楽器のような位置づけである「仕事道具」へのこだわりに、とても共感できました。

 

台本を覚える時、単に「セリフを暗記する」のではなく「気持ちを覚える」というのも、素晴らしいなと思いました。

 

「音符」をただ暗譜するのではなく「気持ち」を込めて覚えなくては!と自身に引き寄せて考えてみると、ピンと背筋が伸びる気がしました。(^^;)

 

「脱力せずに腕に力が入った状態で投げた球は、たとえスピードが160キロでていても威力はなく、簡単に打たれてしまう」ということからも、「脱力」は楽器の演奏に限らず大切なことで、他の分野のプロの方々も常に意識されている事のひとつなのだなと感じました。

 

本書の「まえがき」にも書かれているとおり、音楽家に限らず、さまざまな分野の仕事や勉強に活かせるアイデアが発見できるという印象の本でした。

 

ただし、「箇条書きで簡潔にまとめられたビジネス書」のようなスタイルで書かれた本ではありませんので、「何度か読み返しながらヒントを読み取っていく」ことが必要かなと思いました。 

 

 

小山実稚恵さんのピアノ演奏 👇

柔らかな音色と、ピアノの鍵盤の上を目にもとまらぬ速さで心地よく駆け抜けるような、素晴らしい音の戯れ ♪を堪能できます!

 

個人的に、大好きな演奏家のうちのお一人です。(*'▽')

 

ラ・カンパネッラパガニーニ作曲、リスト編曲


www.youtube.com

Youtubeより引用させていただきました)

 

この素敵な演奏の裏側にある、演奏家の想いや練習についてのヒントを、楽器は違いますが、ぜひ自身の演奏にも活かしていければ良いなと思いました。

 

 

■ 著者について

小山 実稚恵

人気・実力ともに日本を代表するピアニスト。
チャイコフスキーショパンの二大国際コンクールに入賞した唯一の日本人。

2006年から全国6都市にて行われている“12年間・24回リサイタル・シリーズ”が、2017年にいよいよ12年目を迎える。2015年夏より被災地活動の一環として自ら企画立案したプロジェクトが、仙台においてスタート。

CDはソニーよりリリースしており、2017年5月には、30枚目の『バッハ:ゴルトベルク変奏曲』をリリース。

2016年度芸術選奨文部科学大臣賞を受賞

 (Amazon商品紹介ページより引用させていただきました)

 

 

 

気になった方は、チェックしてみてくださいね 👇 

 

 

 

「ルフトパウゼ ウイーンの風に吹かれて」篠崎 史紀著

 

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出版社:出版館ブック・クラブ

発売日:2006年3月1日

単行本:194ページ

 

内容紹介

 

NHK交響楽団コンサートマスターの「マロ」こと篠崎史紀氏のエッセイです。

 

ウイーンに留学していた頃のこと、

初めてのウイーンは高校2年の夏だった。夏期講習に飛び入り参加し、すっかりとりこになってしまった!

「この通りをブラームスが歩いていた!あの窓からモーツァルトが外を眺めていた!そう思うと、彼らが生み出した音楽が私の頭の中で鳴り響いた。

私はこの街で暮らすことを、そしてこの街でヴァイオリンを学ぶことを決意した。

高校の卒業を待ちかねて、私はすぐウイーンに飛んだ。

(P.16 より引用)

 

日本でコンサートマスターになったいきさつ、

 

オーケストラの魅力、

オーケストラでは、一人では絶対に出せないサウンドが生まれる。

オーケストラのサウンドには芸術のエッセンスが詰まっている。

聴く人の魂をゆさぶる醍醐味がある。

(P.22 より引用)

 

アンサンブルについて、

オーケストラの楽器のなかでは、コントラバスが一番先に音を出す。

なぜなら、コントラバスには音が到達するまで時間がかかる、という楽器の特性があるからだ。

といっても、その差は百分の一秒以内だから誰も聴き取れない。

呼吸も同じで、ここで鳴るだろうということを予測して合わせているので、同時に鳴っているように聴こえるのだ。

これは録音してもわからない。

(P.34 より引用)

 

そのほか、

好きな指揮者について、

音楽教育について思うこと、

など、

「マロ」さんの音楽への想いがたくさん詰まった素敵なエッセイです。

 

子供時代の、可愛らしくて思わずにっこりしてしまうエピソードなども書かれています。(*'▽')

 

読んでみた感想、おすすめポイント

 

コンサートマスターの視点から、オーケストラの楽器の特性や、合わせのタイミングなどについても細かく解説されていて、ふだん楽器を弾かない方も「えっ?そうだったの?!」といった興味深いことが、いろいろ発見できるのではないかと思いました。

 

 

演奏会には、その演目を聴きたい人が聴きに来てくれますが、ストリート演奏は「何かを感じさせなければ人は立ち止まってくれない」と思い至って、友人と「ストリート演奏に挑戦」した学生時代のエピソード、

 

言葉や文化と音楽の深いかかわりについて気づき、「フレーズの作り方」や「アクセント」「間の取り方」を工夫するようになったこと、

 

など…

さまざまな「気づき」を、ご自身の演奏に結びつけて考えていることが書かれている箇所が、個人的にとても興味深かったです。 

 

音楽に対する愛情や、作品に真剣に向き合う姿がひしひしと伝わってくる、素敵な本でした。

 

 

■ 著者略歴
(「BOOK著者紹介情報」より)

篠崎/史紀

1963年生まれ。
北九州小倉出身。

3歳より、父、篠崎永育(しのざき・えいすけ)にヴァイオリンの手ほどきを受ける。

15歳で、毎日学生音楽コンクール全国大会第1位。1979年、北九州市民文化賞を史上最年少で受賞。

1981年よりウィーン市立音楽院に留学。

1982年、ウィーン・コンチェルトハウスにて同音楽院のオーケストラと共演し、ウィーンデビュー。

第34回ヴィオティー国際音楽コンクール(デュオ)で第3位。第20回ボルドー国際音楽祭で銀賞を受賞。

1988年群馬交響楽団コンサートマスターに就任。
1991年読売日本交響楽団コンサートマスターを経て、1997年NHK交響楽団第1コンサートマスターに就任。

ソロリサイタルのほか室内楽にも情熱を注ぐ。

東京ジュニアオーケストラ・ソサエティ音楽監督

「アレンスキーのピアノ三重奏曲第1番、第2番」は「音楽の友・ロマンティックを体験するための名盤50選」に選ばれた。

また、音楽療法の分野から、WHO国際医学アカデミー「ライフ・ハーモニー・サイエンス」の評議委員もつとめている。

2004年より、銀座王子ホールにて、新しいプロジェクト「マロワールド」が始動

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

Amazon商品紹介ページより引用させていただきました)

 

 

気になった方は、チェックしてみてくださいね 👇

 

 

 

「憧れ」今井 信子 著

 

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(こちらの写真は、旧版です)

 

出版社:春秋社

発売日:2013年7月24日

単行本:288ページ

 

 

内容紹介

桐朋の学生だった頃のこと、

ヴィオラとの出会い、

アメリカ留学時代に室内楽を学んでいた頃の話、

ミュンヘン国際コンクールを受けた頃のこと、

カルテットのメンバーだった頃のこと、

カルテットを辞めてからソリストとしてデビューするまでの11年間の話、

ヒンデミット・フェスティバルについて、

ヴィオラについてのあれこれ、

家族のこと、

 

などが綴られた自伝的エッセイです。

 

読んでみた感想、おすすめポイント

 

思わず動き出したくなるような、積極的で前向きな気持ちになれる本だなと思いました。

 

行き詰まりを感じて、なんだか気分がモヤモヤしてしまった時に読み返すと、元気が取り戻せる本です!

(あくまでも個人的な感想です)

 

 

好きな箇所をいくつか引用してみます。

 

ものごとに全身全霊でぶつかり、鋭敏に反応する感受性をもつことは、音楽家としも、それ以前に人間としても、本当に大切なことだと思う。

大学と家を往復しているだけでは、たとえ十時間練習できたとしても心は鈍ってしまう。

心が、そして感動が伴わなくては、どんなに技術的に完璧な演奏でも意味はないのだ。

 (P.50 より引用)

 

 

ここへ行きたいと決めたら即行動。

まず誰かに相談しよう、紹介してもらおうというような発想は、まるでなかった。

ほとんど道場破りの武者修行だが、どこでもそこから道が開けていった。

(中略)

要は、自分が本気でやりたいかどうかだ。

そうすれば、必ず手をさしのべてくれる人はいる。

あの頃の私には、本能的にそれがわかっていたのだろう。

(P.93 より引用)

 

 

「とにかく思ったらすぐやってみる」その行動の素早さに、いい意味でとても驚かされます。(*'▽')

 

 

きちんと仕事をしていれば、誰かが必ず聴いていてくれるものなのだ。

 (P.113 より引用)

 

 

どんなときにも、精一杯仕事をしなければ!とあらためて思います。(^^;)

 

 

新しいことはどんどん勉強して取り入れていきたい。

そのために必要な手間はおしまないつもりだ。

疑問があれば、たとえフロリダの果てであろうと訪ねて行って解決する。

古楽奏法で弾きたいと思ったら、バロック演奏家に教えを乞う。

これまで自分が作り上げたことに安住せず、常によりよいものを求めて全力を尽くす、それが演奏家としての責任だと思う。

楽家にこれでいいというゴールはないのだ。

(P.195~196 より引用)

 

 常に上昇志向、さらなる上を目指して勉強に励む生き方に頭が下がります。

 

 

単なる知識や情報ではなく、実際に自分の目で見て、感動する。

そうして全身で受け止めたことの一つ一つが身のうちに蓄積して、人格を形作っていくのではないだろうか。

(P.217 より引用)

 

 

音楽への、ほとばしるような情熱が感じられて、何だかやる気が湧いてきますね!(*'▽')

 

「リスクのない栄光は無い」という言葉が好きだ。

今しかできないことがたくさんある。

階段を一つあがって高いところに進もうと思ったら、覚悟を決めて進んでいくしかない。躊躇していてはもったいない。

できた、できないよりも、その気持ちの方が大事だと思う。

(中略)

これなら大丈夫と保証があって実行するのではない。

やると決めたらやる。ただそれだけだ。

夢があればいきていける。人がまだ踏んだことのない雪道を行きたい。

 (P.235 より引用)

 

 

逆境に遭っても、何があっても「信念を貫いていく強さ」が行間のあちらこちらに感じられて、とても素敵だなと思いました。

こういう精神的な強さを、ぜひ見習いたいです!

 

 

■ 著者略歴
(「BOOK著者紹介情報」より)

今井/信子

1943年生まれ。
国際的なヴィオラ奏者として、ソロに室内楽に活躍、後進の指導にも力を注いでいる。

ヴィオラ音楽の振興に力を尽くし、特に1992年から始めた「ヴィオラスペース」は、ヴィオラの祭典として世界的に知られている。

ヴィオラのための新しい作品も数多く初演し、CDも50タイトルを超えた。

その功績に対して、サントリー音楽賞、芸術選奨文部大臣賞、旭日小綬章など、数多くの賞が贈られている

(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

 

気になった方は、チェックしてみてくださいね 👇 

 

 

  

さいごに

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第一線で活躍する演奏家のエッセイの中から、お気に入りの3冊をご紹介いたしましたが、いかがでしたか?

 

これらの本を読みかえしてみて、どんな分野であっても、何事も自身が「情熱」を感じていなければ、人の心を惹きつけることなどできないのだな、ということを再認識できました。

 

 

大好きなこと、心からやりたいこと願うことがあり、出したい音、伝えたい想いがある。

それを実現するために「スイートスポット」を見つけるのであってその逆ではない。

(「点と魂と」P.58より引用)

 

 

自分の音楽をどう表現していくか、それを探し出していくことが演奏する最大の喜びであると私は思う。

それを楽しめないと、誰にとってもつまらない音楽になってしまう。

これはプロだろうが、アマチュアだろうが変わらない。

 (「ルフトパウゼ」P.184 より引用)

 

 

大切なのは、諦めないこと。

今、何が 一番したいのか。今しかできないことは何なのか。

それをしっかり見極めてほしい。

一番近い道を行く必要は全然ない。

時間がかかっても、好きなことをした方が結局は自分のためになる。

そうすれば、ある日ぱっと目の前が開けるものだ。

(「憧れ」P.218~219 より引用)

 

 

人それぞれ、さまざまな方法を試しながら、最善の方法を見つけていくことが大切なのかな、と思いました。

 

一流のプロの方々に直接お話を伺うことは、なかなかできませんが、こうして本から様々なことを学べるのは、とても素晴らしいことですね。(*'▽')

 

 

それでは、楽しい読書タイムを!

Buona lettura!

  

 

 

この記事でご紹介した【3冊】 👇 

 

 

 

 

 

 

 

ご紹介した本の著者の「演奏」も聴いてみたい方は、

こちらをチェックしてくださいね 👇 

 

 

  

 

 

 

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

 

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